第一章 創造原理

本論に入る前に

 「原理講論」はキリスト教者を対象に文章が書かれているため、キリスト教に馴染みのない多くの日本人にとっては、馴染みのない語句や表現、神学的議題などが取り上げられています。
 また、同様の理由により、冒頭より「神」の存在を前提とした文章となっていますので、神の存在を否定する「無神論者」や一部の仏教宗派の信仰者に対しての補足を「新版 統一思想要綱」769〜781ページより抜粋しておく。

従来の神の存在証明(「新版 統一思想要綱」769〜781ページ の要点)

従来の神の存在証明

①本体論的証明−人間が持っている神の概念を根拠として、神の存在の必然性を証明する方式。例として、アンセルムス(Anselmus,1033-1109)は、プロスロギオン(Proslogion)の中で「人間が神を最も完全な存在として理解しているのは、神が実際に存在しているからである。」と言った。

②宇宙論的証明−トマス・アクィナス(Thomas Aquinas,1224-1275)は、自然界の運動の因果関係を逆にさかのぼって行けば、最後には第一原因に到達するが、それは原動者または自己原因であってそれを神とみた。

③目的論的証明−「人体の構造や生理現象が合目的性を帯びているように、宇宙も一定の合目的的な計画によて形成された巨大な秩序体型であると見て、その計画者がまさに神である。」また「自然界の美と荘厳さから最高の知恵を持った神が世界を創造したと見ざるをえない。」という方式。

④道徳的証明−道徳的な世界秩序の源泉として、神の存在を認める、または神の存在を要請する方式で、良心を神の声と見る立場もこれに属する。

上記①〜④は、神の実在を信じた上で、ただ理論上、神の存在を弁明したものに過ぎない。つまりはじめから有神論的立場に立った上での証明である。

 その反面、統一思想においての神の存在証明は「仮説的方法(より正確には仮説演繹法)」によって行われている。

統一思想においての神の存在証明

 科学的にはまだ不明な事実をまず仮設として立てておき、その仮説から引き出される(演繹される)結論が自然科学的な観察や実験によって検証、証明し、その仮説を定説または真説として公認する方法で、原子やゲルマニウムの存在は仮説的方法によって定説となった一例である。また医者が患者を治療する場合もこの方法による。

※統一原理は”因果律”を肯定する立場にあり、ある原因から発生した結果の世界がこの被造世界であるとみる。因果律が崩壊しているような現象は、無形世界(霊界、現代科学で認識できない世界)を無視し、有形世界(目に見える世界、現代科学で認識できる世界)のみを見ているためと考える。

※その検証の詳細は主に、これから紹介させていただく「創造原理」に記されている。また、更に詳しくは統一思想要項の「原相論」に多く記されている。

第一章 創造原理

本文

 人間は長い歴史の期間にわたって、人生と宇宙に関する根本問題を解決するために苦悶してきた。けれども、今日に至るまで、この問題に対して納得のいく解答を我々に与えてくれた人はまだ一人もいない。それは本来、人間や宇宙がいかに創造されたかという究極の原理を知らなかったからである。さらに、我々にはもっと根本的な先決問題が残っている。それは、結果的な存在に関することではなく、原因的な存在に関する問題である。ゆえに、人生と宇宙に関する問題は、結局それを創造し給うた神が、いかなるお方かということを知らない限り解くことができないのである。創造原理はこのような根本的な問題を、広範囲にわたって扱っている。(41)

概要
  • 人間は長い歴史の期間にわたって、人生と宇宙に関する根本問題を解決するために苦悶してきた。
  • けれども、今日に至るまで、この問題に対して納得のいく解答を我々に与えてくれた人はまだ一人もいない。それは本来、人間や宇宙がいかに創造されたかという究極の原理を知らなかったからである。
  • さらに、我々にはもっと根本的な先決問題は、結果的な存在に関することではなく、原因的な存在に関する問題である。
  • ゆえに、人生と宇宙に関する問題は、それを創造し給うた神を知らない限り解くことができない。
補足

 ここで言う「人生」と「宇宙」とは仏教で言うところの「生老病死」に代表される人生の苦悩と科学が探求する「自然界の問題・法則」。
 「生老病死」は、仏教において避けることのできない人間の四つの苦悩であるといった。また、科学の世界においても「物質の根本や宇宙の誕生、重力の根源、生命誕生と進化の謎」など難問題は山ほどある。
 結論として、これらの問題を解決できないのは、『神』(=第一原因)を知らないからであるとしている。

 つまり、この被造世界(地球を含めた全宇宙と”霊界”と言われる無形世界)の根源、科学で言うところの”ビックバン以前”を第一原因とし、それが何たるかを知ることで結果である”人生と宇宙”に関する問題がすべて解決できるとみる。
 全てが神によって創造されたのなら、創り主である神に尋ねることで全てが明らかになるということである。
 例えば、人間によって作られた知能を持つロボットが存在するならば、設計者である人間に聞くことでその存在目的が全てがわかるのと似ている。